沖縄の子どもが直面している問題 ”子どもの貧困”とは?
“子どもの貧困”という言葉を聞いたことがありますか?
“子どもの貧困”とは、貧困線(生活に必要な最低限の物を購入できる最低限の収入水準を表す指標)以下で生活する17歳以下の子どもの存在及び生活状況を言います。
子どもの貧困率は年々増えていて、2012年では過去最高の16.3%を記録しました。
1クラスを35人とすると、クラスに5〜6人は貧困状態にある子どもがいるということになります。
しかし、これはあくまで全国の話。
沖縄は更に深刻です。
沖縄の平均年収(2014)は、本土の468万円を大きく下回り327万円。
失業率は本土の3.3%に対し、5%(2015.8)。
非正規雇用率は44.52%と全国で一番高いです。
有業者で年間所得が200万円を下回る世帯割合(2012)は24.7%と、全国9.4%の2倍を超えます。
そして、沖縄県の出生率は全国1位。
良いことですが、必然的に子ども一人にかけることの出来る教育費は減少することが考えられます。
また、通塾率・家庭学習時間共に沖縄県は全国最下位(2010,2012)であり、離婚率は全国1位。
離婚率と関連性があると言われている非正規雇用率(2012)は44.52%と、これも全国で1位です。
ひとり親世帯の貧困率は54.6%に上ります。
沖縄の世帯総数に占めるひとり親世帯の割合(2013)は、沖縄では母子家庭が5.46%、父子家庭0.90%であり、この割合は全国の約2倍です。
沖縄の子どもがいかに大変な状況に晒されているかは容易に想像ができますよね。
しかし、日常生活の中で、途上国のように路上で物乞いをする親子や、今日のごはんに困っている子どもを目にすることはありません。
こういう“平均的な(もしくは裕福な)人と比べて貧乏”という状態を“相対的貧困”と言います。
沖縄には、相対的貧困に晒されている子どもが本当にたくさんいます。
『死ぬほどビンボーじゃないならいーじゃん』
と思う方もいるかもしれません。
では、なぜ相対的貧困が問題なのか?
この“相対的貧困”には、“子どもの希望”を奪ってしまう可能性があるんです。
子どもの現実に目を向ける
例えば、友達みんなが塾に通っているのに自分の家だけ通うお金がなかったとします。
友達はどんどん応用問題が解けるようになって、テストの点もどんどん良くなる。
だけど自分の家は塾に通う余裕なんてない。
それどころか、お母さんは生活費を稼ぐために朝も昼も夜もいない。
忙しい親は、夕飯にスーパーの割引惣菜を用意するのが精一杯。
惣菜を食べながら、ふと友達が次の夏休みに家族でディズニーランドに行くと言っていたのを思い出す。
行きたい大学があるけど、うちの家計じゃ絶対に進学なんて無理だろうなと思う。
野球部に入りたいけど、スパイクを買う余裕もない。
勉強しても進学できないし、そう考えると勉強もやる気が出ない。
そうやって育った子どもは、やりたいことを諦め、行きたい学校を諦め、なりたい職業を諦め、それが少しずつ人生の選択肢を狭めてしまうことが少なくありません。
私自身、英語が学びたかったけれど家に金銭的余裕がなく、大学に進学する余裕もないことが分かっていたために、高校は商業高校を選択。
どうせ進学出来ないからと言って遊びまわりました。
大切な仲間と出会い、とても楽しかったけれど、将来に対しては希望が持てず、未来の自分を冷めた気持ちで見つめながら青春時代を過ごしました。
大人になり、働いてお金を貯めて進学し、現在は大学院生となりましたが、結果的に現役生に6年の遅れを取りました。
行きたい高校を諦めたあの時に、もし親が、そして私が進学支援制度を知っていたら、私の道はもっと大きく開けていたかもしれないと思う時もあります。
悲しいことに、統計では最終学歴が低いほど平均年収は低く、無業率(無職率)は高くなっています。
つまり、貧困家庭に育った子は、なかなか貧困から抜け出すことが出来ません。
経済的な格差は、教育的な格差にも繋がります。
それだけではなく、心身の主観的な健康観(自身をどれくらい健康と思っているか)にも影響します。
そして貧困は連鎖し、負のサイクルが出来てしまいます。
“みんなと比べて貧乏“なだけで、死ぬわけじゃない。
しかし、“みんなが貧乏”という状況は、そんなに心の健康には影響せず、
”自分だけ貧乏”という状態が一番ストレスになることが分かっています。
心筋梗塞の患者が少なくて有名だったアメリカのある貧しい町では、
経済的格差が広がるにつれて心筋梗塞の患者数が増加したという報告もあります。
“みんなより貧乏”は、思った以上にストレスなんですね。
モチベーションをどこに見つけていいか分からない子どもに向かって
『そんな困難に負けずに勉強してビンボーから抜け出せよ』と言うのは、あまりにも酷に感じます。
沖縄の子どもを守ることは、沖縄の未来を守ること。
沖縄を今よりもっと豊かにするためには、平和活動や観光産業の活性化も大切だと思います。
しかし、子どもの学ぶ権利を守ること、そして心身の健康を保ってあげることに、どれだけの人が目を向けているでしょうか?
どれだけの人が、今の子ども達が置かれている状況を知っているでしょうか?
親や本人が支援制度自体を知らない可能性もあります。
お金を渡すだけが支援じゃない。
知らずに諦めてしまう子どもをつくる前に、
まず、私たちが学ぶための方法を知り、伝えることが必要だと思います。
沖縄子ども支援ネットワーク(外部リンク)
沖縄まちと子ども基金 | みらいファンド沖縄(外部リンク)
フードバンク セカンドハーベスト沖縄(外部リンク)
上記以外にも、各地で学習ボランティアなどが行われています。
奨学金やその他の支援制度、ボランティア、なんでもいい。
あなたが知った支援を、まずは誰かに伝えることが沖縄の平和で豊かな未来をつくるのではないでしょうか?
移住してくる方、うちなーんちゅ、みんなで心も身体も健康な沖縄にしていきたいですね。
vol.2では、具体的に裕福な子とそうでない子にどのような差が生まれるのか、金持ちA君・貧乏B君を例に比較しています。
貧困と教育の関係を数字で見ると、どうなるか?調査した私も驚きました・・・
沖縄の子どもの貧困vol.2 ‐貧困で進学できない子どもたち―