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沖縄県民と鉄筋コンクリートの関係

県外から初めて沖縄に来た方々が驚かれる事の一つに、住宅の違いがあります。 県外では木造住宅が主流ですが、沖縄県では鉄筋コンクリート住宅(RC造:Reinforced-Concreteの略)が主流となっています。
総務省統計局が2015年2月26日に公表した沖縄県の戸数と種別によると、鉄筋コンクリート住宅(鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)・鉄骨造(S造)を含む)が49万7900棟となり、木造住宅(防火木造を含む)は2万4400棟となります(その他5,000棟)。
割合にすると、なんと鉄筋コンクリートが94%木造が5%となり(その他1%)、県内の鉄筋コンクリートの普及率が突出して進んでいる事が分かると思います。

ではなぜ沖縄では木造住宅ではなくて鉄筋コンクリート造が主流になっているのでしょうか。

赤瓦から鉄筋コンクリートまでの歴史

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沖縄の住宅イメージといえば木造赤瓦の屋根にシーサーが想像されると思いますが、現在はその様な木造民家はほとんど見受けられなくなっています。
その理由として、時は70年前の第二次世界大戦までさかのぼります。沖縄は先の大戦で壊滅的な被害を受け、元あった多くの木造住宅だけでなく山林が消失してしまい、木材が簡単に手に入りにくくなりました。
その時に米軍から無償提供されたのが『規格住宅(工場でフレームを作り、現地でテント・梱包材・茅などで仕上げたもの)』というもので、家を失った県民たちはそこに移り住みました。
それにより、昔は『ユイマール(沖縄方言で、ユイ(結い、協働)+マール(順番)の意味で順番に労力交換を行なう事。1人で出来ないような事を持ちまわり制などで行う相互扶助のシステム)』によって建築されていた木造民家や技術が、材料不足や規格住宅の登場によりに失われていきました。
1948年に米軍基地内で初めてコンクリートブロックが建てられ、1958年には基地外にも建築されるようになり、コンクリート技術が沖縄の建築業界に浸透していきました。
戦後も木造住宅を建てる方もいたのですが、1949年のグロリア台風により多くの木造住宅が倒壊したため、台風が非木造化の流れを加速させる大きな要因の一つにもなりました。

このように木造赤瓦住宅から現在の鉄筋コンクリート住宅に変わっていった背景には、戦争による木材の不足アメリカ統治台風による災害が大きく関わっていました。

木造住宅とコンクリート住宅の違い

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では、木造住宅とコンクリート住宅(RC造)との違いって何だろうと思いますよね。
簡単ではありますが一覧表にまとめてみました。

RC住宅
木造住宅
耐久年数(税法上)
47年 22年
耐震性
高層階でも耐震性あり 2階までなら耐震性あり
耐火性
強い 弱い
遮音性
50dbまで遮音可能 30-35dbまで遮音可能
断熱性
外気温の影響を受けにくい 外気温の影響を受けやすい
建築コスト
高い 安い
固定資産税
高い 安い
耐久年数

この年数は国交省が発表している数字になりますが、実際の住宅はその年数以上は確実に持つように作られていて、メンテナンス次第ではずっと住む事も可能です。しかし、RC造の方が耐久年数が高いのは確かです。

耐震性

木造住宅とRC住宅ではRC住宅の方が耐震性は強いですが、現在の木造技術で建てた住宅では簡単に倒壊する事はありません。

耐火性

耐火性もRC住宅の方が高いです。最近は防火木造住宅もありますが、RC住宅の比ではありません。

遮音性

遮音性もRC住宅の方が優れています。米軍基地に囲まれた沖縄なので、エリアによっては飛行機や戦闘機の音が大きい地域もありますが、窓を防音窓に変えるだけで騒音被害がなくなるという事が、コンクリート住宅の遮音性の高さを直に表していると思います。

断熱性

RC住宅は木造住宅に比べて外気温の影響を受けにくくなっています。沖縄では特に夏場はエアコンが必須になりますが、外気温の影響を受けにくい分エアコンの効きが良く、光熱費の削減にも繋がります。
ただしコンクリートは新築から数年は湿気を吐き出しますが、内部に溜まった湿気は吐き出すことが出来ません。なので、とくに梅雨の時期は室内がカビだらけになるという事もしばしば聞かれます。

建築コスト

建築コストは木造住宅の方が安くなります。しかし沖縄には木造住宅の技術者がまだ少なくRC住宅の技術者が多い為、沖縄県では本土のようなRC住宅と木造住宅の建築コストの差ほど大きくありません。

固定資産額

木造住宅の方が固定資産額は安くなります。一概には言えませんが、RC造は木造の1.3倍の固定資産税が掛かるともいわれています。しかし逆にRC造は資産価値が高いという事にもなりますので、資産価値が高く耐久年数も高いRC住宅は、木造より高く売買されるケースもよくあります。

このように比較してみるとRC造の方が木造より優れているように感じられます。
しかし、木造には建築コストの低さや固定資産税の安さなどの費用の軽減や、住んでいて心地よく感じられるといったメリットがあります。また最近は沖縄でも木造住宅を見かける機会があり、少しづつ普及してきている感があります。

上記の内容はあくまで参考資料としてご覧ください。

台風や災害に対するメリット・デメリット

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沖縄での生活に台風は絶対に避けられないものです。(※参照:沖縄の台風豆知識
沖縄県民が台風に慣れているとはいっても、沖縄地方に上陸する台風は本州に上陸する時よりも勢いが衰えることなく到来します。しかしどんなに強い台風が来ても人的被害が少ない理由の一つに、RC住宅で生活している事が挙げられます。
耐震性などに優れているRC住宅は、雨水の浸水、地盤の緩みによる土砂災害等の警戒や避難警報が出ない限りは家にいる方が一番安全です。
また東日本大震災などの大災害でもRC造が優れている事が証明されました。(参照:『日本経済新聞』2011年4月7日

このように沖縄戦から始まった沖縄の鉄筋コンクリート文化は、沖縄の歴史的・風土的に見ても、切っても切れない最良の工法であると言えます。

鉄筋コンクリートと仲良く暮らそう

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沖縄移住をするという事は、ほぼ間違いなく鉄筋コンクリート住宅に住む事になります。
梅雨時期の湿気によるカビに困ったり、木造の様なぬくもりを感じられなくなるかもしれません。
RC住宅と上手く付き合うには、梅雨時期は除湿対策をしたり、外気を取り入れたりして空気の循環を心掛けましょう。また台風の後はエアコンの室外機を洗ったりして塩害対策に備えましょう。
鉄筋コンクリートの歴史やメリット・デメリットを理解すると、より鉄筋コンクリートのお部屋と楽しく生活できる気がしませんか?

さぁ、コンクリート住宅と仲良く暮らして素敵な沖縄移住ライフを満喫しましょう!

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