沖縄の子どもの貧困 vol.2 -貧困で進学できない子どもたち-

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沖縄の子どもの貧困 vol.2 -貧困で進学できない子どもたち-

沖縄の子どもの貧困 貧困で進学できない子どもたち

前回、沖縄においての子どもの貧困について書きました。

沖縄の子どもの貧困 vol.1 -増加する子どもの貧困-
http://iju.okinawa/forchildren/

今回は、更に細かく沖縄の貧困問題について言及していきたいと思います。

前回の記事で、経済格差が子どもの教育費に影響し、教育費がかけられない為に子どもの学力が伸びにくくなり、
結果として学歴に影響し、それが更なる経済格差につながる。

つまり、貧困家庭に育った子は、
負のサイクルに巻き込まれて、貧困から抜け出すことはとても難しい
ということについてお伝えしました。

って言われても、お金持ち貧乏な子どれだけの差があるのか、想像できますか?

そこで今回は、
沖縄生まれ、沖縄育ちの金持ちA君・貧乏B君が大人になるまで、
そして大人になってからを比較してみたいと思います。

金持ちA君、貧乏B君の人生

家庭環境の違い

沖縄の子供の貧困

まずは金持ちA君

A君のお家は年収1000万(父・母・妹の4人家族)

幼稚園から高校までは私立のインターナショナルスクールへ。
大学は有名私立に進学、3歳から小6までピアノを習い、中学校では野球部に所属。
高校3年生の時には大学受験のために予備校に通いました。

かたや貧乏B君

B君のお家は年収200万(母・妹の3人家族)
母子家庭で母親は仕事で夜はいません。

幼稚園から高校まで公立に通い、夜は親がいないために、
深夜は妹を家に置いて仲間とゲームセンターに行くこともありました。
習い事・部活はせずに、高校ではコンビニのアルバイトをして過ごしました。
大学進学は、成績が振るわなかったのと家にお金を入れるために諦めます。

学費を比べてみましょう。

金持ちA君の学費

幼稚園~高校までで約2,360万円(沖縄県の某私立校の学費で算出)
大学は有名私立大学に進学し、約600万円かかりました。(県外某私立大学)
大学は県外のため、学費以外に仕送りが15万円かかりました。
ピアノの月謝は月に8千円。野球部の道具を揃えるのに10万円。
高校2年生から週6で通った個別指導の予備校は、2年間で240万円(某個別指導塾)かかりました。

次に貧乏B君。

幼稚園から高校卒業までにかかった費用は約500万円(全て公立)
部活はせずに妹の面倒を見ていました。
コンビニのバイトは(720円×5時間×週5)×4週=7万2千円/月
その全てを母親に渡していました。

沖縄の子供の貧困

金持ちA君が大学を卒業するまでにかかった費用は約4,130万円。

貧乏B君が高校を卒業するまでにかかった費用は約500万円。
そのうち3年間のバイト代の約260万円は自ら補てんしています。

なんと、親からの金銭的援助の差額は3,630万円!
すごい差ですね。

大人になると…

有名私立大学を卒業し、一部上場企業に勤めたA君の30歳になった時の給料は年収600万円。
高校を卒業して地元の企業に勤めだしたB君の30歳時の給料は年収240万円。
沖縄の貧困

そこから給料が変わらなかったとしても、
A君が10年働けば、B君との差額の3600万円はチャラになる計算です。

改めて数字にしてみると、
A君とB君には約3,600万円分の教育格差が生まれていると言うことが分かりますね。

差額でリッチな一軒家が建ちます。。。わぉ

沖縄県の現状はとても大変

4世帯に1世帯が年間所得200万円以下

沖縄県の有業者で、年間所得が200万円を下回る世帯割合(H22)は24.7%と、全国9.4%の2倍を超えます。
つまり、沖縄県では4世帯に1世帯は月に12万円程で生活していることになります。
沖縄の貧困

県内某私立幼稚園の学費38,000円も、払える家庭はほんの一握り。
それどころか、公立の学費を払うのも困難という家庭はとても多いことが分かります。

母子世帯が多い沖縄

沖縄での母子世帯出現率は5.46%(H25)と全国2.65%(H23)の2倍を超えます。
そして、沖縄県の母子家庭の平均年間収入は155万円です。
沖縄の貧困

国が出しているデータでは、裕福でも貧乏でも勉強すれば学力が上がるけれど、
もっとも貧乏とされる家庭の子が「毎日3時間」勉強して獲得する学力の平均値は、
もっとも裕福な家庭の子が「全く勉強しない」場合の学力の平均値を下回ることが報告されています。
(第2回子どもの貧困対策に関する検討会(2014))

受けている教育の質が違うことも要因の一つかもしれませんね。

つまり、子どもの学力は、
努力だけではどうにもならないこともある。ということが分かります。

4世帯に1世帯が年間所得200万円以下

「私は勉強してきた。努力して来たから今の生活がある」
そう考える高学歴・高収入の方はたくさんいると思います。

しかし、貧困家庭の子どもは、
「努力の土俵」にすら立てなかった
ことを考える必要があるのではないでしょうか?
あなたがしてきた「努力」ですら、親が敷いたレールの上に成り立っているかもしれません。

2008年に行われた、1800人を対象としたアンケート調査では、
「希望するすべての子どもが大学に行けるべき」と答えた人は42.8%しかいなかったという報告もあります。

日本がいかに子どもの貧困について無関心であるかが見て取れる結果となっています。

「貧困」「非行」「学力」の関係

学費
今、一番ポピュラーな奨学金制度(日本学生支援機構)を最大限に活用しても、
入学時特別増額貸与として最大50万円(入学後の貸与)、月貸与額は最大12万円(私立医・歯学+4万、獣・薬学+2万まで貸与)。
これだけではとてもA君の大学には通えません。
この金額だと、国公立大学を狙うのが妥当です。
しかし、国公立大学はとても倍率が高く、かつセンター入試で全ての教科において高得点が求められます。

予備校にも行けない…
学校の勉強にもついていけない…
そんなB君に全教科においてまんべんなく高い学力が必要となるのです。

家に帰れば妹の世話をして、母親は家にいない。生活も苦しい。
そんな中で、進学の相談は出来ません。
予備校にも行けません。自分でやろうと思っても、基礎学力が追いつかないため、教科書を見ても訳がわかりません。

ここで、「学校の勉強をちゃんとやってこなかったからでしょ」
と思ったあなた。何にも分かっていません。
子どもがどれだけ環境に左右されるかということを。

深夜に親がいない、寂しい。
友達に誘われる。
勉強しなくても誰も何も言わない。
周りも誰も勉強していない。

周りとの関係をシャットアウトして、将来を見据えて、学業に励むことが出来ますか?

とても難しいと思います。

学校では先生から落ちこぼれとして扱われます。
落ちこぼれの「役割」が与えられるのです。
そのイメージを払拭するのは、とても困難です。

仮にB君が進学を諦めなくても、
毎日妹が眠ったあとに3時間勉強したとしても
「裕福な子が全く勉強しない状態」にも及ばないのです。

それでもB君が何とか地元の国公立大学に合格したとして、
入学金と前期分の授業料などの入学にかかる費用は、入学時特別増額貸与の50万円では十分とは言えません。
しかも、それは入学後の貸与です。
一旦自分で用意しなければならない場合もあるということですね。

B君の家庭の収入では民間の学資ローンは通りません。
銀行の一番金利が安いカードローンの利子は、日本学生支援機構の利子の約2倍。

すぐに返さなければ驚く速さで利子が増えていきます。
でも、一体どこに返すお金があるのでしょうか?

これだけの困難を若干18歳の少年が抱えて、
自分で方法を模索しながら、果たして本当にやり遂げることが出来るでしょうか?

「頑張れないこと」が、どれほど辛いことなのか、どれだけの人が想像できるでしょうか?

沖縄県の、少年院を仮退院した子の実態調査(H25)では、その60.8%が貧困家庭であり、全国の2倍以上。
養育環境は、63%が放任家庭で、50%が母子家庭。
98%が学校では落ちこぼれていて、86.9%が不登校状態です。
その影響は、貧困と教育格差に直に影響します。

子どもの貧困=沖縄の”いま”

沖縄の夜
深夜に遊びまわる少年少女。
私も疎ましく思うことがあります。

しかし、どれだけの人がその子が抱えている人生に、きちんと目を向けたことがあるでしょうか?
落ちこぼれだからと排除することが、果たして本当に一番良い方法でしょうか?

もし、この子たちに早期に学ぶ機会を与えれば、
すくすくと育った子ども達が、沖縄経済をもっと豊かにしてくれるかもしれません。
すごい発明をして、すごい賞を貰って、私たちの暮らしが明るくなるかもしれない。

自分の子どもが、カツアゲされることもないかもしれない。
ニュースで見るような、暴行やいじめを受けることもないかもしれない。
私たちが無関心である限り、
貧困家庭の子どもは救いの手を差し伸べられることはないと言っても過言ではありません。

見ないふりをした代償は、必ず皆さんの生活に影響を与えます。

子どもがいきいきと生活できる沖縄を目指して、どうしていけばいいのか?

沖縄県も、黙って見ているだけではありません。
子どもだけの支援ではなく、親への支援も必要です。

次回は、沖縄県の子どもの貧困への対策について書いていきたいと思います。

貧乏B君は、あなたの周りにいませんか?

B君の姿は、「今の沖縄の姿」そのものかもしれません。

<引用・参考>
沖縄県内のひとり親家庭の現状と取り組み状況について(2015):小那覇涼子
沖縄の子どもの貧困の現状と課題(2015):山内優子 沖縄の少年非行を考えるー沖縄少年院を仮退院した少年の実態調査よりー(2015):山内優子
子供の貧困対策に対する大綱~すべての子ども達が夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指して(2014):内閣府
子どもの貧困対策について:厚生労働省 「子供の学習費調査」の結果について(2014):文部科学省
家庭の社会経済的背景と学力格差 不利益な環境を克服する学校の取り組み(2014):耳塚寛明
日本学生支援機構ホームページ:http://www.jasso.go.jp/shougakukin/

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